仏具の豆知識

沈香の神秘

 日本では、「香すなわち沈、沈すなわち香」といわれる様に、古来から至極の香りとされてきた沈香ですが、その出来方、メカニズムは、非常に不思議で神秘的とさえいえるものです。
 沈香は、沈丁花科アキラリア属の木の中に、ごく稀に、樹脂が長い年月をかけて溜まり出来たものです。木に何らかの理由で傷が付いたり、内部に病的変化をおこした場合に、外部或いは病変部から雑菌が侵入するのを防ぐために、樹脂が溜まるとされています。丁度、人間が怪我をして、切って血が出た時に、かさぶたになるのと似ています。いつか木は枯れて倒れ、樹脂部分だけが、土の中に埋もれる、そして何十年か後に沈香として発見されるということです。また、沈香は、樹脂が沈着して原木よりも重くなり、比重が大きく水に沈むものを上質としたことから、「沈水香木」略して「沈香」と呼ばれる様になった、と言われています。
 沈香は、常温では香りは強くありませんが、加熱をすると得も言われぬ、幽玄な香りを発します。東南アジアの特定の地域でしか採れないものですが、現在、ラオス・ベトナム・インドネシアなどで、沈香を作り出す木の苗木を植林しているそうです。十年位育てた木に小さな穴を開けてバクテリアを繁殖させ、約二十~三十年かけて生育させていますが、中々上手く行かないそうです。沈香は、人の力では作り出せない、自然の神秘が生んだ香木と言えるかもしれません。そして、沈香の中でも最高級品とされるのが、伽羅です。常温でも香り、五味〔酸(さん)=すっぱい、鹹(かん)=塩辛い、甘(かん)=あまい、苦(く)=にがい、辛(しん)=からい〕が揃う絶品とされています。
 沈香、そして伽羅も、現在では、品質の良いものはほとんど全く採れない状態と言われており、特に伽羅は、金よりも遙かに高く取引がされています。沈香・伽羅 共に、非常に貴重な香原料となっている訳です。

香木類

白檀
白  檀

沈香
沈  香

伽羅
伽  羅

 

※参考文献
・『「香」その歴史と新しい世界』 香老舗 玉初堂
・『仏壇仏具ガイダンス』 仏事コーディネーター資格審査協会

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